『地の掟 月のまなざし』 2000年
『天地のはざま』      2001年  

 たつみや章:作  東逸子:絵  講談社  小学校高学年から


 『月神の統べる森で』で月神の巫者シクイルケを失ったアテルイとポイシュマは、愛と憎しみを抱きムラへ。そしてワカヒコはヒメカのクニへと、別々の道を歩み始める。
 その続編である『地の掟 月のまなざし』では「かがやく尾を持つ星の息子」であるポイシュマ(この星は現代のハレ−彗星でしょう!)を長アテルイがムラへ連れ帰る。
 そのムラは支配する者もされる者もなく、共存共栄の心豊かな狩猟生活を営んでいる。
 一方、ヒメカの国に戻ったワカヒコを待ち受けていたのは、陰謀と欺瞞と野心が渦巻く汚れた世界。その二人が運命の再会を果たし、続編「天地のはざま」へ続く。

 悠久の昔、自然の恵みに感謝して暮らしていたムラ人たちは、土地を囲ってクニと称し、山を焼いて稲を育てる新来の民に襲われていく・・・・。その戦いにポイシュマとワカヒコたちは巻き込まれていくのだ。
 ムラの男たちと共に交易の旅に出た二人だったが、塩作りのムラで再び離れ離れになっていく。裏切られたワカヒコは「アヤのクニ」の囚われの身となり、その危険は塩のムラやアテルイのムラにも及んでいく。
 果たして、戦争と平和を暗示する二人の「運命の子ら」はどのようにこの苦境を乗り越えていくのか?! 物語はまさしく佳境を向かえ、次の最終巻への期待に胸膨らむ!! とにかく、ぐいぐいと読者をひきつけ、ますます面白い展開になっていく。
 あとがきに「狩猟や採集などによって生活する縄文人の住む土地に、農耕で暮らしをたてるという異なった文化をもった人々が移住してきて、それぞれの暮らし方のちがいがいさかいをひきおこす・・・」と書かれているが、その歴史のうねりはとてもフィクションと思われない。きっと、その当時同じようなドラマがあったに違いないと思ってしまう。
 しかし、この物語の面白さは、単なる歴史物語ではなく、「諸々のカムイ」「オロチ」「ポイシュマの父であるほうき星の神」などの登場によって、ファンタジ−としての奥行きを深め、想像力豊かな長編連作となっているところ。
 最終巻では、血塗られた人間の悪しき欲望が勝利を治めるのか、善き人の心の毅さ、やさしさが逆転ホ−ムランとなるのか・・・・・。

  一万年以上も続いた縄文時代から弥生時代へと移行する際の衝突や軋轢をあつかった物語が、案外少ないことに、改めて驚きの念をもつのです。

文責 しろくまちゃん 2001年12月



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