『小さい魔女』  

 オトフリ−ト・プロイスラ−:作  ウィニ−・ガイラ−:画  大塚勇三:訳  学習研究社
  1965年  小学校中学年から   


 ドイツの代表的児童文学作家オトフリ−ト・プロイスラ−は1956年に「小さな水の精」を発表し、翌年ドイツ児童図書賞の特別賞をもらいました。その次に書いたのが「小さい魔女」で、1957年に発表すると、1958年度優良児童図書に選ばれています。

 昔々、深い森の奥にある一軒家にひとりの小さな魔女が、アブラクサスというカラスと一緒に住んでいました。 1年に1回ブロッケン山に集まって魔女たちが歌い踊りまくるのですが、小さい魔女は小さいというだけで参加できないのですが、こっそり踊りの中に入り込むのです。それがばれて厳しい罰を受ける事になり「いい魔女になります」と魔女のお頭と約束するのです。
 それから、小さい魔女は一生懸命魔法の勉強をして、カラスの忠告を得ながら、薪拾いのおばあさんを助けたり、2頭の馬を助けたり、焼き栗売りのおじさんを助けたり・・・・・など、沢山の良い魔法を使います。
 そして1年がたち魔法委員会の席で試験を受けますが、意外な事に「お前は魔法を使って良い事ばかりしたから悪い魔女だ」と言われ、また罰を受ける事になったのです。 そこで年寄り魔女たちのいいがかりに腹をたてた小さい魔女は、自分の勉強した魔法を使い小気味良い仕返しをしたのでした・・・・・。
 この小さい魔女は、今までの魔女の持つイメ−ジとは全然違って、無邪気でそそっかしくて明るくってかわいくて、とても親しみのもてる愛らしい魔女なのです。だから、子供たちはとても身近な存在として感じることでしょう。いつのまにか物語に入り込んで、小さい魔女の活躍にハラハラドキドキしながら、仕返しに拍手喝采を送ることでしょう。
 もちろん、人を助けたり親切にする事とか、動物や生き物を大切にするという、愛の心も育つことでしょう。とっても楽しいユ−モアと共に、子供たちに正義感を満たしてくれるところが、プロイスラ−のすごさだと思います。
 挿し絵も魅力的で北欧らしさが良く出ています。小さい魔女はとがった鼻をもち、スカ−フとエプロンをし、尖った靴をはいて、如何にも魔女という感じが伝わってきます。
 欧米には魔法使いや魔女の物語が実に多いとは思いませんか?! それは、欧米社会にはそういう言い伝えが沢山有り、プロイスラ−自身も多分にもれず、実在するものとして感じていたからに他ならないのでしょう。
 子供たちは「こんな魔法が自分も使えたらいいな−!」と夢と空想の世界を楽しみ、そして読書の喜びを実感していくことでしょう・・・・・。小学生には、とても読みやすく楽しい本だと思います。

プロイスラ−の他作品
『わが町シルダ』 『ト−マス・フォ−ゲルシュレック』 『大盗賊ホッツエンプロッツ』
 

文責 しろくまちゃん 2001年7月



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